風俗街にあるコンビニで

仕事

高校生の時に、台東区千束、風俗街の吉原のど真ん中にあるコンビニでアルバイトをしていたことがある。

私はどこにコンビニがあるか全く知らず、求人情報誌に載っていた、高校生OKのアルバイトの面接に行った。住所を頼りに歩いていると、客引きの男の人があちらこちらに立っていた。制服で歩いていた私をジロジロ見てくる。何でこの子はここを歩いているんだ?という目つきだった。

ここで合ってるよな・・。そのコンビニは風俗街のど真ん中にある一軒のコンビニだった。周りはソープランドだらけ。

マジかーと思いつつ、面接に無事通り、働くことになった。そのコンビニは、おでんも肉まんもホットスナックも無いし、クレジットカードも使えないし、電子マネーとかも無い時代だったので、仕事内容は楽だった。お客さんは、ソープランドや飲み屋で働くお姉さん、客引きの男の人が主だった。たまに近所に住んでいる人が買いにきたが、子供や学生はいなかった。

普通のコンビニでは置いていない、ドンペリとかの高い酒がレジの上の棚に置いてあって、たまに売れた。雑誌コーナーも風俗情報誌が主だった。今はネットの時代だから、もうその雑誌は無いだろうな。1冊1000円以上する本で結構高かったと思うが、20年前はよく売れていた。コンドームがめちゃくちゃ売れるのかと予想していたが、私がレジをしていた時は一個も売れたことはなかった。風俗街のど真ん中のコンビニで買うのはあからさますぎるから、ここでは買わないのかな?本番NGだから、そもそもコンドームは必要ないのか?買って持って行かなくても店で用意されているのだろうか?わからないが、とにかく売れていなかった。

冬の寒空の中、客引きのオジサンは毎日店の前に立っていた。1時間ごとにホットの缶コーヒーを買いにくる、あのオジサン生きてるかな・・。

ソープランドで働いている女の人は目を合わせず、そそくさと買い物をしていく。休憩中なのか、濡れた髪にサンダルで毎日買い物に来る女の人がいた。その女の人は、毎日5本入りの使い捨て歯ブラシを3袋くらいまとめて買っていく。何に使うのだろう・・と思いつつ、その人が毎日買っていくので、いつも在庫は切らさないようにしていた。気持ち悪い客の相手をした後に死ぬほど歯磨きするのかな・・。

働いていて困ったことは、領収書の宛名を書く時だ。『宛名は?』と聞くと、『熟女エンジェル』とか『べっぴん生娘』みたいな声に出すのをためらうような名前なのに、聞き慣れないから一度じゃ聞き取れなくって、何度も聞いてしまう。まぁ困ったことはそのくらいだろう。場所柄、性欲が溜まりすぎて目が血走っている人とかいるのかな・・とか思っていたが、そういう人は来なかった。

後になって調べたら、吉原には歴史があり、高級ソープで有名で、そこで働いている女の人のレベルも高いらしい。でもコンビニに来ていた、風俗で働いているであろう女の人はみんな血色が悪く、気分が悪そうな人が多かった。気分が良いはずないよな。お客は、どんな気持ちで相手してもらうのだろう。お金を払って自分の性欲を満たしてもらっている時に一瞬冷静な気持ちになって自己嫌悪に陥ったりしないのだろうか。

色んな世界がある。人間は、なんて面倒臭くて複雑な生き物なんだ。

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