本物の破天荒

本物の破天荒に出会ったことはあるだろうか？私はこれまで、一人だけ出会ったことがある。

コーヒーチェーン店、某ドトールでアルバイトをしていた時に一緒に働いていた女の人だ。その人は年は私より下だったのだが、私より先に入っていたのと、眼力が凄く、いつも鷹のような目つきをしており、短気な人だったので、恐ろしくて敬語で接していた。

その人はいつもお客にキレていて、嫌いな客にはすごい態度で接していた。よくクレームこなかったな。。と今になって思う。いや、もしかしたらクレームきていたのかもしれないけれど。

嫌いな客にはコーヒーの量を減らしたり、パンをわざと潰してから渡していたりした。私はいつもそれを見て、客に何か言われるんじゃないかとビクビクしていたが、意外と気づかないのか、そのことで客から文句を言われることはなかった。

彼女はとにかく喧嘩っ早かった。恐ろしかったエピソードがある。

ある日彼女がレジをしていた時に、ちょっと変なオバサンが買いに来た時だ。そのオバサンは『何にしよっかな〜。ん〜。抹茶ラテにしようっかな〜。う〜ん。』と言っていて、なかなか決まらなかった。彼女は痺れを切らし、『抹茶ラテですねー。抹茶ラテ一つ！』と勝手に注文を通した。私はドリンクを作る役目だったので、抹茶ラテを作り、トレーにのせた。そしたらオバサンは『えー！私、抹茶ラテなんて言ってないわよー！』と言った。彼女は一瞬にして導火線に火がついた。

『おもち（私の名）！！このオバサン、抹茶ラテっつったよね？』と大声で私に聞いた。

私はどうするべきか一瞬悩んだが、『い、言いましたね。』と言った、殺気を感じたオバサンは店の外に逃げたが、おい待て！と彼女は追いかけてオバサンを追いかけて行ってしまった。

彼女はいなくなってしまったが、お昼で混雑していてまだ後ろに客が並んでいたので、私は『次の方どうぞー。』と言い、平然を装った。

ちらりと外に目をやると、彼女がオバサンに馬乗りになって殴っていた。私は見てみないフリをしてその場をやり過ごした。少しして、「ふー。」とか言って彼女は店に戻って来た。オバサンを片付け終わったのだろうか。。恐ろしくて彼女にオバサンをどうしたのか聞けなかった。

この人を怒らせたらヤバイ。。

ある日の朝出勤したら、『ねえ聞いてよ！さっきコンビニで極上肉まん買ったら、1500円です。とか言われて、は？肉まん一個だけどっつったのに、バイトの奴がまた1500円です。って言うから、お前じゃ話にならないから店長呼べっつって。店長出てきて、申し訳ありませんって渡されたのが普通の肉まんで！これじゃねえ！ってカチ切れて、肉まん店長に投げつけてきたわ。肉まんじゃなくて極上肉まんだっつーのに！マジふざけんなよ。』私は聞きながら、何なんだこの人。と思いながら笑って聞くことしかできなかった。

腹が立ったら容赦無くブチ切れる。こんなに破天荒な人に初めて出会った。彼女は痩せていて華奢だし背も小さいのだが、とにかく眼力が強く、絶対負けねぇというオーラを放っていた。

とんでもない人だが、そんな彼女に少し羨ましい気持ちもあった。いつも客に対してもヘコヘコせずに堂々としていたからだ。怒られるのが怖くてビクビクしていた私とは大違いだ。

彼女は破天荒なくせに、仕事は絶対休まないし、遅刻しない人だった。『旦那にアイスピックで刺されたんだけどー。』と足を引きずりながら仕事に来たこともあった。いや、休んで病院行こうよ。本当に変わった人だった。彼女は今も元気に破天荒しているだろうか？