透明人間

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私は下請けの契約社員。

下請け先の会社に出向という形で在籍している。出向先のオフィス勤務なので周りは同じ会社の人ではない。この間、終業時間間近に一人でフロアの端の方で仕事をしていたら、急に「あっ!あそこ空いてますよ。あちらに皆さん集まってください〜!」と誰かの声が聞こえた。

ふとパソコンの画面から目を外すと、ずらずら30人くらいの人たちが自分の周りに集まっていた。

え!なにが始まったの??やばい!どかなきゃ!とパソコンと荷物を置いたまま席を立って、隅に隠れるように立った。

あのー、私、朝からここに座って仕事してたんだけど、見えてなかった?

今からここに人集めるんで、いいですか?とかなんか聞いて欲しかったよ。

そうしたら他のところに移動して仕事したのに。

「はい!これから〇〇さんのお別れ会を始めます!」

誰かが退職するらしく、お別れの会が突如始まった。

フロアの端っこで隠れるように聞いていたら、退職する人と一緒に仕事していた仲間からの贈る言葉が始まった。「この部署に〇〇さんが配属されてすぐ、プロジェクトの立ち上げが始まりました。開発から携わっていただき、軌道に乗せることができました。〇〇さんの力無くしては絶対に成し遂げられませんでした。本当に〇〇さんがいなくなってしまうと寂しいですが、またさらに次のステップに進まれるということで・・」みたいなことを言っていた。

退職する人は「配属された時に5年一区切りと考えていて、5年で成果を出そうと思っていました。本当に大変でしたけど、チーム一丸となってようやく軌道に乗せることができて、自分の役目は終わったと思いました。次の仕事は業種違うのですが、自分を活かせる仕事だと思っています。」などと言っていた。

なんか・・すごいね。

転職を考えるときに、優秀な人は自分の能力を活かせる仕事を探すのか。

私は5年で成果を出そうとか、自分の役目とか、考えたこともないよ。

その退職する人は業務上、関わりがなかったので顔は知っているが話したこともないし、どんな仕事をしているか知らない。年齢は私と変わらないくらいだと思う。

いくらお給料もらってるんだろ。下請けの私の給料明細見たら少なすぎてビックリするんじゃないか?

お別れの会がなかなか終わらず、もう終業時間は過ぎているのにパソコンも荷物も置いたままなので席に戻れなかった。みんなで記念撮影が始まってしまった。居た堪れなくなり、トイレに籠った。

早く帰りたいのに。

何これ。クラスの輪に馴染めなくて休み時間をトイレで過ごすアレじゃん。

虚しくなってきた。

トイレから戻ったら、お別れ会は終わっていた。送別会にみんなで行ったのかフロアにはほとんど人がいなくなっていた。

パソコンと荷物を片付け、そそくさと退勤。

あの人たちに私は見えていない。私は透明人間になった気分だった。

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